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【電磁波シリーズ No.1】固体物質と共振する電磁波 ~水中・地中を進む超長波

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HAARPのコントロール室((画像はこちら [1]からお借りしました)

 前回は【電磁波シリーズ】のプロローグとして、「電磁波が引き起こす物体との相互作用から、その本質を探る」というテーマを提起し、そのために解明したい問題を抽出しました。


何らかの外圧を結晶固体にかけると固有の振動数で発振をおこす現象があるということです。この発振が低周波数の電磁波を出したり、電磁波と共振して物質が振動し始めたりする原理がわかれば、地震時の電磁波発生説、HAARPによる人工地震説、熱移送説の電子レンジ効果などを、一つの原理で説明できるのではないかと考えています。

 今回は、その中でもスキャンダラスな議論を呼んでいる「HAARPによる人工地震説」を取り上げます。


 




●水中、地中を貫通する超長波

 ところで、電磁波には様々な波長のものが存在します。地震を引き起こすような電磁波があったとして、どのようなものが考えられるのでしょうか。

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電磁波の波長(クリック [2]で拡大・画像はこちら [3]からお借りしました)

 上の図中、最も左にある、3~30kHzの超長波は、他の電磁波に無い性質を持っています。中波や短波は水中を進むことはできませんが、超長波は水中や地中を進むことができるのです。

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海上自衛隊・えびの送信所にある日本最大のアンテナ(22.2kHz、500W)(画像はこちら [4]からお借りしました)

 そのため、水中を進む潜水艦は、超長波を利用しています。しかし、送信するために、全長数十kmに渡る長大なアンテナ施設が必要なので、陸上からの単方向通信であり、潜水艦からの送信は不可能です。(潜水艦からの発信には、アンテナを水面に出し、通信衛生を介して使います。使うのはミリ波)

また、GPSが民生用として開放される以前は、超長波のきわめて遠くまで届く性質を利用して、船舶の航行を支援するシステムに利用されていました。

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かつて、日本の建築物史上高さ日本一の座にあった、オメガ航法システム「対馬オメガ局(10.2~13.6 kHz)」のアンテナ(画像はこちら [5]からお借りしました)

この写真を見てもおわかりの通り、超長波を発信するためには、巨大な施設が、そして電力が必要です。

 超長波は地中でも進むことができます。この性質を利用して地中探査を行うことができる他、地中のマグマなどの流動に伴って発生する超長波を利用して、地震の前兆を捉える研究も行われています。(参考リンク [6]

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地中~大気にある電磁波(画像はこちら [7]からお借りしました)

すなわち、超長波だけが、水中、地中を進んで地盤に達し、地盤に影響を与えうる電磁波であるということです。


●超長波による地盤への影響

 地中からの超長波は、地盤が崩壊する際にも発生しますが、これは、石英などが崩壊する際、圧電効果によって表面電荷を発生させることが原因ではないかと考えられています。
そして、石英などの圧電素子に電界を与えれば、変形を起こすという「逆圧電効果」も知られています。
そして、それが石英の固有振動数と合致し、かつ極めて強ければ地盤の崩壊、すなわち地震を引き起こせるかもしれない、というのが、電磁波による人工地震説です。
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水晶(石英)は電圧を掛ける一定の周期で振動します。(画像はこちら [9]からお借りしました)

もちろん、花崗岩中の石英は、長石にガッチリと挟み込まれています。そうした状態の石英を振動させ、あるいは破壊させるには、どのくらいの力が必要なのでしょうか?
また、石英を崩壊させるほどに強い電界を作る超長波をどうやって発生させるのか、という問題もあります。(これらについては今後の研究課題とします。)


●超長波を発生させる電力のありか

 潜水艦用無線施設の例に挙げたように、超長波を発生させるためには全長数十kmに渡る長大なアンテナ施設と膨大な電力を要します。まして、花崗岩を破壊する電界を得るほどの電磁波を発生させるためには、少なくとも発電所を束ねるほどの電力が必要となるはずで、到底実用的とはいえません。

ところが、発電所を束ねる程の電力は、至る所にありました。

それが「電離層」です。

例えば、極地方で見られるオーロラ中には、10万~100万MWという自然の電流が存在し、これは10~100箇所の大規模発電所の電力に匹敵します。オーロラでなくとも、地上80~300kmにある大気は太陽光線などの働きにより光電離して、膨大な電力をため込んでいます。

電離層に存在する電力を自在に操ることができれば、地盤を破壊するほどの超長波を発生させることも不可能ではないかもしれません。

次回は電離層について、追究していきます。

 

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