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次代を担う、エネルギー・資源』水生圏の可能性 7.プロジェクトにはどれ位お金がかかるのだろう?

みなさん、こんばんは 😀
 
今回は、もしこれから国家プロジェクトとして「藻のエネルギー研究開発」を事業化していくとしたら、いったいどのぐらいの予算が必要なのか?  という現実的な側面から、今回は、藻のエネルギー研究・開発における投資額のオーダー感覚を掴んでみたいと思います。
「新エネルギー事業って、いくらあったらできるの???」
気になりますよね 😉
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「へ~。このぐらいの費用があれば、このぐらいの研究開発ができるんだ~!」
 
記事を読み終わった後にそんな感覚を持っていただければ幸いです 😀
それでは、現在日本で取り組まれているいくつかの新エネルギー事業の現状と、海外での藻プロジェクト等を参考にして、藻のエネルギー化プロジェクトにはいくら必要なのか?に迫ってみたいと思います
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1.国内の新エネルギー開発のプロジェクト事例を調べてみる 
setubi4.jpg [1]八木バイオエコロジーセンター
まず、日本における新エネルギー事業の投資額の事例をみてみたいと思います  
 
①ボンドによる風力発電施設の事例[株式会社 市民風力発電] 
<事業内容>市民や地域が主体となって取り組む風力発電事
<施設概要>風車の購入と設置のみ
<市民風車の初期投資額> 各1基の設置金額
石狩市かぜまるちゃん 約3億2000万円(1,500kW)
石狩市かりんぷう   約3億2000万円(1,650kW)
秋田市竿太朗     約3億5000万円(1,500kW)
輪島市もんぜん風車  約5億3500万円(2,000kW)
 
■初期投資額 3億円~5億円 プロジェクト
 
②八木町の八木バイオエコロジーセンター[ 家畜糞尿等再利用施設 ]の事例
 
<事業内容>家畜糞尿をメタン発酵させ発生するメタン用いて発電を行う
<施設概要>堆肥施設/発酵棟 2棟,堆肥舎 2棟, 製品庫 1棟,撹拌機 ,堆肥製造量 約 7,000トン/年 ,初期投資額 523,969千円 
メタン施設/BIMA消化,ガスホルダー , 脱水機 ,発電, 廃水処理施設, 初期投資額 568,000千円
■初期投資額 合計11億円プロジェクト
 
③ 京都市の廃食料油燃料化施設
 
<事業内容>家庭から出る廃食用油を回収し、環境にやさしいバイオディーゼル燃料を精製する事業
<施設の概要>主要設備 原料貯蔵タンク ,前処理槽,反応分離槽 ,精製槽 ,メタノール貯蔵タンク,軽油貯蔵タンク,軽油混合器,ラインミキサー,製品貯蔵タンク,製造補機設備,ボイラ,空気圧縮機,窒素発生器 ブラインチラー,冷却塔 啓発・展示室 ,管理棟3階 初期投資額 751,000千円
 
■初期投資額 7億円プロジェクト  バイオディーゼル燃料 5,000㍑/1日および 軽油 混合燃料 6,000㍑/1日の生産能力 
⇒いまのところ日本国内の新エネルギー初期投資額は、10億円程のオーダー範囲ではないかと思われます  
 
2.藻から燃料をつくるプロジェクトの投資額の事例を調べて見る 
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現在、世界全体で75社以上が藻類の研究を進めています。5-10 年後の実用化を目指している540 億円もの大規模な投資を行っているエクソンモービル社をはじめとする、海外企業及び日本のプロジェクトの初期投資額の現状を調べてみました。 
<海外事例>
この数年で、かなり大規模な資金が藻エネルギーの研究・開発に注ぎ込まれています。プロジェクトによる投資額とその研究内容を、いくつかの企業について分析してみると・・・
 
●Spphire Energy社 135億円 
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Spphire Energy社は、90億の資金を集め、カルフォルニアに実験施設を設けその後施設を拡大、既に実証研修~実証プラント(テストプラント)まで完了しています。その後、エネルギー省から2009年に補助金5000万ドル、農務省から5450万ドルの融資保証を受け、現在は既に実用プラントの段階に入っています。少なくとも実用プラントの初期投資額は、自社調達分5000万ドルを含めると135億円程度であると推察されます。
 
⇒遺伝子操作によりエネルギー抽出が容易な微細藻を開発・トータルコストを引き下げを図る研究
 
 
●Synthetic Geneomics社 540億円
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Synthetic Geneomics社は、エリクソン・モービル社から3億ドルの資金提供受け(6億ドルの内、3億ドルはエリクソン・モービル社内の研究費)、現在実証プラント(テストプラント)による検証を3億ドル(270億)をかけて行っている段階だと思われます。いくつもの藻の研究・開発を並行して行っている為、資金規模が通常の5倍程度投入されているようです。この実証プラントによる検証が成功すると、次の実用ブラント段階でさらに大規模の資金投入が予定されています。
 
⇒炭化水素を作るよう遺伝子操作された単細胞藻を工業規模で培養することでコスト削減を狙う研究
 
 
●Aurora社 36億円
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Aurora社は20億円の資金でカリフォルニア大学バークレー校のタシオス・メリス教授が開発した開放池型システムによる藻類の培養技術を用い、バイオ燃料生産プロジュクト推進。さらに16億円を追加し合計36億円の資金で2009年に8ヘクタールの実証プラント(テストプラント)を建設し進化拡大中。
 
⇒油脂・糖分豊富な微細藻種の特定/(非遺伝子組み換え) /培養/バイオマス収穫技術/油脂抽出の研究開発
 
 
<国内事例> 
まだまだ、日本は基礎研究の域を出ておらず世界的にも出遅れ感がありましたが、ついに筑波大学さんが動きだしました  
●筑波大学の渡邊先生が、15億円を投資して、実証試験施設を建設
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現在の技術では微細藻類の年間生産効率は1ヘクタール当たり最大約120トン。これを、実用化を目指す2018年から20年ごろまでに1000トンまで向上させる。というビジョンのもと、筑波大学が15億円を投じて実証試験施設を大学構内に設置が決定しています。
 
1600平方メートルの敷地に培養装置などが設置される実証研究施設の計画です。これに先立ち、筑波大学は5月に出光興産やデンソー、住友重機械工業、熊谷組など十数社の企業やトヨタ自動車傘下のトヨタ中央研究所などとともに「藻類産業創生コンソーシアム」を立ち上げるようです。
藻を利用した新エネルギー事業といっても、これまで見てきたように、初期投資の費用がプロジェクトによって10億~540億円と大きな幅があることが分かります。それは、研究開発段階~実用化までのどの段階まで含めた投資額なのか?対象とする藻の種類を1種類とするのか?複数にするのか?どのぐらいのスピードで実現するのか?などで大きく投資金額が変わってくるからです
 
 
3.開発投資をどのように考えらたらいいの?
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どうやら、一言で藻のエネルギー新事業といってもやはり、研究・開発のステップごとに投資額を分けて捉える必要がありそうですね。各々の段階で、どのぐらいの費用がかかるのか?が掴めれば、これからのプロジェクトの実現イメージが具体的に見えてくると思います。それでは、その研究・開発ステップを見てみましょう。
 
藻のエネルギー化の研究から商品化にいたるステップには、これまで調査したところ、大きく分けて四段階のステップがあります。というわけで、各々の研究・開発のステップに対する初期投資額のオーダー感覚を掴む為に、各ステップごとの初期投資額を分かりやすく表にまとめてみました。 
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こうしてみると、以下の研究・開発のステップの順に、投資金額が大きくなることが分かります。
 
①基礎研究の段階 主には研究室での試験管レベルの研究
②実証研究の段階 特定株の大型タンクによる培養 大型の培養タンク等の小規模の設備が必要
③実証プラントの段階(テストプラント) 培養から抽出までの一連のシステムが可能な比較的中規模の施設・設備が必要
④実用プラントの段階 企業としての採算を伴うビッグスケールの施設・設備が必要

 
 
どうやら②の実証研究のステップまでは、10億~20億程度。③の実証プラントでもなんと30億~50億程度の初期投資で十分可能であることがわかりました  
 
国家予算の規模からすれば、数十億は微々たる数字です。例えば、車のエコ減税の年間補助金・数千億円と比較しても、たったの50億円!です。今後の日本における藻のエネルギー利用の可能性と(世界的開発競争・特許競争)という状況を考えれば、現在でも十分先行して国費投入するに価する新エネルギーの研究・開発分野であると思います
 
 
 
<参考にさせてい頂いた資料>
ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社 日本における微細藻エネルギー産業の育成に向けて

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