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『次代を担う、エネルギー・資源』水生圏の可能性  2.植物の光合成と油脂成分の貯蔵 ~藻と高等植物の油脂(大豆油・菜種油)を比較してみる~ 藻類の可能性とは?

石油に変わる新エネルギーとして、世界が注目する「藻からつくる石油」。その油脂成分を生成する藻類の可能性追及第二弾をお送りします 😀
 
石油をつくる藻がいる!な~んて話しを聞くと、
「え~!!?」
わたしたちは思わず吃驚(ビックリ)仰天してしまいます。
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でも、植物油って聞くとどうでしょうか?
「ん~。ふつうかも?」 
そうですね。紅花油・ゴマ油・菜種油・大豆油・米油・オリーブオイル・・・わたしたちの身近には植物たちの作った油脂がたくさん溢れています。わたしたちの植物が生成する油脂の利用は意外にも古い歴史があるのです。
「でも、それって食用じやないの?」
今でこそ、食品利用のイメージが強い植物油脂ですが、その用途はエネルギー利用として始まっています 😉
「!!!」
今回は、油脂の歴史と光合成の構造、陸上植物との比較から藻類の可能性を探ります
 
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植物油脂のエネルギー利用って? ~植物油脂利用の歴史~
現在では、植物油脂の利用の殆どが食品利用、工業利用(潤滑油・エンジンオイル等)そして、一部での医療、美容目的等の利用です。しかし、近代に入るまで、特に日本では植物油脂の利用は、実はエネルギーとしての利用が中心でした。 
 
(もちろん食材として食べて人間のエネルギーにする事とは別にですよ)
では、その植物油脂のエネルギーは、いったいどのように使われていたのでしょうか?
そう、正解です!
灯りを灯すためのエネルギーとして使われていたのですね。
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人類にとって“あかり”の歴史は、すなわち“火”の歴史です。それはまた、“油脂”の歴史でもあります。
 
火を作り出すことを覚えた人類は、長時間にわたって火を絶やさない方法を考え、囲炉裏を生み出し、木を燃やしました。 竪穴式住居の縄文人の部屋の真ん中に作られた囲炉裏は、炊事と暖房と、そして灯火の役割を果たしました。 そしてやがて、古墳時代を過ぎると、油脂を燃料とする灯火が登場するのです。
 
灯火の歴史は古く、紀元前3000年のエジプトでは既に灯火利用の為にオリーブが大規模に栽培されていたという記録があります。
 
日本では3~4世紀神功皇后の時代に、大陸から搾油の技術が伝わり、摂津の国、遠里小野(現在の大阪・住吉区)の住吉明神にハシバミの実から搾った油を献灯した灯明油が、植物油脂利用の最古の記録とされています。 
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その後、より灯火の燃料に適した植物性油脂の追求や栽培、搾油方法の研究、その他動物性油脂や魚油利用なども加わり、蝋燭も含めて、灯火は宮廷,貴族階級,社寺や武士階級へと着実に浸透し、植物油脂のエネルギー利用は日本列島に広がっていったのです。(とはいえ、灯火の利用は都市中心で、江戸時代が終わるまで地方の農家や漁村では、まだまだ囲炉裏の火が唯一の灯りであったといいます)
 
では、それ以前の灯火はどうしていたか?という点については、日本書記の記述などから、油脂成分を多く含む松などの枝や根を小さく割ってそのまま使っていたようです。
 
このように遡ると日本では国家の成立期から、油脂を含む種子を選んで油をつくり、エネルギーとして利用してきた歴史があるのです。
 
植物油脂は陸上植物の多くの種子から取れます。現在、世界的にもポピュラーな植物油脂だけでも、菜の花(菜種)、ヒマワリ、とうもろこし、オリーブ、大豆、綿実、落花生、サフラワー、胡麻、アボガド、コメ、椿、椰子、パーム、カカオ、ブドウ・・・・等たくさんあります。
 
一般的に植物は光合成によってでんぷんを作り出すといわれていますが、ではなぜ陸上植物はでんぷんの他に油脂を作り出すのでしょう?その植物の構造に踏み込んでみたいと思います。
 
 
  植物が蓄える油脂って? ~植物の光合成と油脂~
植物は、光合成により炭酸ガス(CO2)と水(H2O)から、糖類を生成します。
具体的には、6分子の炭酸ガスと6分子の水で、1個のブドウ糖分子を合成します。
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これを反応式で表すと、
6CO2+6H2O → 6126(ブドウ糖分子)+3O2(酸素)
 
となります。
 
このように植物は、このブドウ糖分子を結合させて、さまざまな多糖類というものを生成させます。
おなじみの砂糖(しょ糖)は、このブドウ糖が2個結合したものです。
 
03.JPGべんりや日記 [1]さんからお借りしました
 
 
そして、このブドウ糖を何百個も結合させたものが「でんぷん」なのです。ブドウ糖を何百個も結合させることで、水に溶けにくい性質となり、細胞質の中に粒状に集めて貯蔵しています。  
 
この糖類からさらに生化学反応をすすめると油脂類(脂肪酸の結合物)が生成されます。(糖類と油脂類の構成分子はC・H・O。組み合わせ方が異なるだけで構成分子は同じなんですね)油脂類は、糖類に比べて発生エネルギー(1グラム当りの発生エネルギー)が大きく、エネルギー貯蔵物質として優れているのです。 
以下の表は、糖類、たんぱく質、油脂類を比較したものです。
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3種類の栄養素を比較すると、糖類とたんぱく質は、1グラム当たり4Kカロリーのエネルギーを生み出します。それに対して、油脂類(脂肪)は、9Kカロリーと倍以上のエネルギーを生み出します。一方、エネルギー発生反応では、糖類が最も早い反応でエネルギーを生み出してくれます。 

多糖類は、まずはブドウ糖に分解され、その上で、光合成反応とは逆のブドウ糖分解反応でエネルギーを生み出します。光合成の逆反応なので、反応工程が少なく、すぐにエネルギーが生み出せます。(衰弱した時に、ブドウ糖の点滴で回復を図るのは、このためです。) 

これに対して、油脂類は、糖類から更に多くの反応工程を経て合成させていますので、その逆を辿る必要があり、エネルギー発生が非常に遅いという特徴があります。 陸上植物(の種の)栄養貯蔵は一般的に、この糖類(でんぷん)と油脂類の両方で行っているのです。
 

 
なんで藻類なの? ~地上植物と藻類のエネルギー生産量の比較~
さて、これまで見てきたように植物油脂の利用の歴史は古く、巧みな陸上種子植物達の光合成の仕組みとエネルギー貯蔵戦略の恩恵に依拠してきたのです。

このように陸上種子植物は優れた油脂(エネルギー)を作り出すことは古くから知られ利用されてきましたが、近年なぜ油脂を作り出す藻類が注目されているのでしょうか? 
 
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上記の表は代表的な油脂を作り出す陸上植物と、油脂を作り出す藻類との比較表です。(ちなみに油脂分が最も多い南洋油桐は、日本ではなじみがありませんが、肥料なしで大量の収穫が可能、また毒性があるため食用とはならず、食料の供給を圧迫しないことから、近年バイオディーゼル燃料の切り札として注目されている種です)
 
最近注目されている油脂を作り出す藻は、実に生産量・油脂成分比率・ディーゼル油生産量・エネルギー生産量の全てにおいて、陸上植物の種子を大きく上回っています。例えばディーゼル油生産量でみても菜種の50~100倍、エネルギー生産量ではなんと大豆の666倍(最大)!!!にもなるのです。 

世界が大きな可能性を感じるわけですね。 
 
また、藻類が世界的に注目されている理由には、このような極めて高いエネルギー生産能力とともに、もう一つの理由があります。それは世界の食料事情の問題。人口爆発と飢餓問題の視点から、一時期世界的に加速したバイオエタノールなどのように、食料となる植物・穀物のエネルギー転用そのものに世界的に疑問の声が上がっているからです。
エネルギー生産力が高く、食料生産を圧迫せず、耕作地以外の使われていない土地や水域を有効に活用できる。この夢のような藻類の発見と共に有効活用の可能性に向けて世界は動き出しているのです

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