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『次代を担う、エネルギー・資源』林業編4 林業バイオマスには大量の未利用系~間伐材~が存在する

 
 
 
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創作木工ラボ「日々木」HPより [1] 
 
 
こんばんは。
 
前回のエントリーでは、製材所等で発生する木片の再生利用方法等について [2]紹介しましたが、今回は、間伐材の利用等について紹介してみたいと思います。
 
 
■林業の衰退と間伐材の現状
 
間伐材を含めた林業の現状については、以前のエントリー『次代を担う、エネルギー・資源』 林業編1 林業の現在~循環型社会の実現に向けて~ [3]に紹介されていますが、少し抜粋引用させていただきます。
 
 
昭和30年には木材の自給率が9割以上であったものが、木材の輸入自由化により価格競争力を失ってしまい、今では2割まで落ち込んでいます。
 
市場に乗らず、負の遺産となった国内の林業は、間伐を中心とした保育作業や伐採・搬出等に掛かる費用も回収できず、林業はすっかり衰退してしまいました。間伐をはじめとする森林の整備(手入れ)を行ったり、主伐(収穫のための伐採)を行っても採算がとれず、赤字になってしまうのです。
林業経営者の意欲は低下し、若者は都市部へ雇用を求めるようになりました。また、林業以外に目立った産業のない山村地域では、林業の衰退とともに、地域の活力も低下し、林業離れによる後継者不足、林業就業者の高齢化、山村問題、限界集落と呼ばれる問題まで起こっています。

 
 
 
間伐が行われなくなったり、間伐材が放置されたまま山が増加し、森林が荒れていくという結果になっていきます。
 
森林の維持には間伐は必要だが、間伐自体が採算にのらず、大量の間伐材(約174万t、間伐材の半数以上が未利用のままとなっています。
NEDO試算 [4] )
  
 
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間伐林 熊野古道歩きHPより [5] 
 
 
普通に考えれば、間伐材とはいえ、せっかく植えて育てた樹木が、使用されずに置かれたままであることは、もったいないと思えてきます。何か、有効な利用方法はないのでしょうか?
 
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■間伐材の利用 ~割り箸
 
間伐材利用として思いつくのが割り箸ですが、実際、普段何気なく使用している割り箸、年間どのくらい使用しているのでしょうか?
 
 
現在、日本において割り箸の消費量はここ10年、250億膳前後で、国民1人が年200膳使っています。国内で使用される割り箸の97%は輸入で、そのほとんどが中国産です。そのため国内産は一部高級品を除いて事実上壊滅状態なのです。
 
これは中国産の割り箸が1膳約0.5~0.8円に対して日本は1膳当たり2.08円と中国産の割り箸が安価であることが一番の要因です。このような状況の下、日本はその多くを中国を中心とした国々からの輸入に依存しているため、過度な伐採がなされ、その結果森林が減少、荒廃しています。自国の森林を放置する一方で、他国の森林を破壊に追い込んでいるのです。

 
るいネット [6]
 
250億膳を木に換算すると約80万本。東京ドーム80個分の森林に相当する。
 
楽しい株式会社HPより [7]
 
 
 
割り箸というと日本のものと思いがちですが、日本に出回っている割り箸の大半が輸入物だというのは、少し驚きです。
輸入されている割り箸は、中国産だが、割り箸の原材料となる木材は、中国産ではなくて、ロシア産等のものを中国で加工してるようです。最近では、直接ロシアから日本に輸入する動きもあります。
  
 
では、全体でどのくらいが割り箸として使用されているのでしょうか。
 
 
一年に割り箸250億膳というのはそれに使う樹木の体積にすると割り箸1膳10ccだから、25万立方メートルになる。つまり仮に日本の森林からとれる樹木を使って割り箸を作ると、日本の森林が生長する1億立方メートルのうち、0.25%が割り箸に使われる計算だ。
 庭木を育てた人ならすぐ理解できることだが、樹木は生長する。日々、成長し枝を伸ばす。手入れをして切り取った枝葉の量は結構、多いがそれを利用する事もできないので、焼却するしかない。
 また本格的な森林では、まず小さい木をびっしり植えて成長するごとに間引いて行かなければ「木材」になるような木はとれない。間伐材などと呼ばれる「使い道のない小さな木」は日本で年間500万立方メートルでる。そのうち200万立方メートルは使っているが、残りの300万立方メートルは捨てている。
 捨てている間伐材だけで300万立方メートル、これに対して日本人が使う割り箸が25万立方メートル.。つまり
「もし、日本人が割り箸を積極的に使ってもらったら、せめて捨てている間伐材の1割は有効に使える」
ということだ。

武田邦彦氏HPより [8]
 
 
 
全て日本製の割り箸にしたとしても、間伐材の1割程度の消費になる。しかし
 
 
入割り箸の寡占化により、国内の割り箸製造業者の多くは廃業しており、壊滅的な状況にあるとのこと。そのため、仮に現在出回っている割り箸を全て国内産にしたとしたら、とても対応できない状況にあるようです。
 
るいネット [6]
 
 
 
コストも含め、割り箸産業の再生が同時に必要になってきます。
  
 
 
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間伐材使用の割箸 勝藤屋HPより [9]
 
 
 
 
■その他の間伐材の利用
 
割り箸だけ利用では、1割までしか使用できないことがわかりました。その他に、間伐材の利用法はないのでしょうか。
 
 
 
当然、当事者である林業の担い手でも間伐材の利用法は試行錯誤が行われています。
間伐材ホームページ 全国森林組合連合会リンク
「間伐・間伐材利用コンクール」受賞作品 (下段は筆者のコメント)
・ウッドメイクキタムラ:間伐材を使ったシステム家具の開発
     ヒノキ製だから結構高級感がある
・アサヒビール:「アサヒの森」の間伐材から作った販促商品
     市場原理っぽいが、企業が森を持つ、というのは今後有りか
・中本製箸:間伐材による割り箸製造、年間1千万膳
     これが本来の使い方、杉の割り箸は気持ちいい
・幸田町立坂崎小学校:間伐材伐採体験と間伐材を使った物づくり
     遊具などは間伐材の利用法として十分あり
・長浜木履工場:間伐材を使った下駄製造
     杉や檜の木目が美しい
どれも、利用法に困るような原料の製品ではありません。非常に美しい。
間伐材が大量に産出されるなら、木質系で製造可能な製品にすればいい。
問題は市場原理に乗せるとペイしないことが多い、という問題だけのはずだ。

 
るいネット [10] 
 
 
 
間伐材が、特に、木材として劣っているわけではないようです。
利用方法もいろいろと試行錯誤されています。
 
細い間伐材を集成材として加工することによって、使用用途を広げていく試みも行われています。
 
 
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間伐ホームページより [11]
 
 
こうした集成材を用いて、家具等を制作しています。
 
 
また、丸太フェンスなど、間伐材の形態をうまく利用した製品作りなども取り組まれています。
  
  
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知恵の輪ニッポン [12]
 
 
 
その他、間伐材を利用した製品作成の取り組みとしては、
 
土佐龍 [13]や著名人が立ち上げたmoreTrees [14]などが比較的メジャーな製品作り取り組みだと思います。
 
 
 
 
■間伐材を使うと
現在は、あまり活用されていない間伐材ですが、国内の木材使用に流用すると大半が国内でまかなえる量となります。
 
 
 
林業が活気付いていたS35年頃の生産量があれば、H20年度国内消費量の80%はまかなえるわけです。
さらに眠っている間伐材を積極的に利用すると、年間で6,000千m3の供給上乗せが期待出来、国内消費量の90%を国産材で供給できることになります。
(参考:H18年度 間伐材利用量 28万ha・・・3,240 千m3)
~中略~
製材用材  27,152千m3
パルプ・チップ 37,856千m3
合板用材  10,269千m3
その他用材  2,688千m3
しいたけ原木   548千m3
薪炭材    1,005千m3
(林野庁H20年度 木材需給表より抜粋)

 
『次代を担う、エネルギー・資源』 林業編1 林業の現在~循環型社会の実現に向けて~ [3]
 
 
 
上記エントリーによると、国内の用途別需要は、紙の原材料となるパルプ・チップ用が、全体の約半数を占めています。また紙の使用量は、ここ10年ぐらいは、頭打ちだそうです。紙の使用料がこのままの量で推移するとしたら、身近である紙の使用をちょっと節約することで、ほぼ100%が国内の木材でまかなえることになります。
 
間伐材等、国内の木材だけを使用するだだけで、国内木材需要を満たしていけるだけの潜在的なポテンシャルが、現在の日本の森林にはあるのです。
 
  
問題は、現在の林業が産業として対応できるかどうかです。
 
 
これについては、次週のエントリーで考えてみたいと思います。
 
 
 

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