『ジャイアントケルプ』 はどの様にして陸上の森林に匹敵する森(藻場)を海の中に作る事が出来たのでしょうか?
海の中にも50mにも成長する植物がいました
。
その名は 『ジャイアントケルプ』 ・・・コンブの巨人ですね。
生息域は、海流が強くよく荒れる寒い海域
です。カリフォルニア沖は冬場に大嵐が起きる海域です。
このような荒々しい海域に適応したのがジャイアントケルプなのです。
その結果が、水深20mの海底から1日に50~60cmも立ち上がり、あっという間に水面を葉で覆いつくし森の様な景観を作り上げるのです。
海の植物にとって一番重要なのは光です。
光合成を行う植物プランクトン、浮遊性の藻類、固着性のコンブ類は太陽光をめぐり争奪戦を繰り広げてきました。
海流が穏やかで海面が安定している海では浮遊性の生物が有利ですが海流が速く荒れる海では浮遊性が不利で、固着性が有利です。
そこで、より深い所に固着して一気に海面へ葉を広げ、他の海藻を排除する作戦があり得ます。
その最大の成功者が 『ジャイアントケルプ』 です。
それでは、ジャイアントケルプの巨大化を支えている仕組み、構造を見てみましょう。
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ジャイアントケルプは根(ホールドフェスト)、茎(スタイプ)、葉(ブレード)、そして気泡(浮き袋)から成り立っていますが、根から光や栄養は吸収せず、葉は両面共に光合成をします。⇒色々な写真は『Nature Scene』から拝借しました。
ジャイアントケルプの根
仮根(カコン)とも呼ばれ、海底の土の中に生えているのではなく岩盤に固着し、長さ30mを超える藻体を嵐にも耐えて支えています。
この巨大な仮根を作るエネルギーも水面近くで行われた光合成で作られ、藻体内部を走るトランペット形細胞糸と呼ばれる細胞列によって、効率的に輸送された光合成産物に支えられています。
ジャイアントケルプの気泡(浮き袋)
葉状体の付け根にある気泡で藻体全体を浮かせて効果的に光合成を行います。
個々の葉状部は、気泡と葉状部の間の部分(葉状部の最下部)で活発に分裂して先端方向へ送り出されることで成長しています。
緑藻類、紅藻類など色々な海藻類のなかで気泡をうまく進化させたジャイアントケルプを始めとする褐藻類だけが巨大化し、より深い海に生活圏を広げる事が出来たのです。
ジャイアントケルプはどの様にして海の中に森(藻場)を作れたのでしょうか?
藻類は陸上植物より弱い光で効率よく光合成を行えますが、最低限の明るさは水面を照らす光の約1%です。その為、植物の生育可能な水深は数メートルから40m程度しかありません。
水には光を吸収する性質があるうえに、水中の植物プランクトンが光合成に使える光を海藻より先に吸収してしまいます。
そこでいかに光を獲得するかをめぐり海の植物はしのぎを削るのです。
戦略の一つは根を持たずに浮遊するという植物プランクトンの生き方。もう一つは海底から立ち上がり海面を覆う戦略。これの勝者がホンダワラやジャイアントケルプなどの大型海藻です。⇒画像は 『植物が地球をかえた! 葛西奈津子著』から拝借しました。
一般的に冬は夏より海の透明度が高いので、冬のみ植物の生育可能域は深くなります。
そこで、冬の間に発芽して夏の生育可能域まで成長してしまえば、夏になって根元が暗くなっても 葉
の先端で光合成ができます。
ジャイアントケルプは葉の付け根に気泡(浮き袋)を持っており、なるべく深い所から生えて立ち上がり大型化して競争相手よりも上に出て海面を覆ってしまいます。この戦略の勝者がジャイアントケルプであり、森を作る事が出来た秘密は浮き袋を発達させたからです。
ジャイアントケルプにくるまって眠るラッコ
ジャイアントケルプが森をつくることによって、プランクトン、それを食べる小魚、甲殻類が繁殖します。そして、小魚、甲殻類をエサにする哺乳類までもが生息できる豊かな海が実現されているのです 😮 。
テレビでの人気の可愛らしいラッコは、ケルプをまとって眠ります。眠っている時、波や風で流されない様にケルプにくるまっています 。