米国・スリーマイル島原発事故(1979年)、旧ソ連・チェルノブイリ原発事故(1986年)以来、原子力発電所の新設は、欧米で全面的に停止しました。しかし、地球温暖化問題を契機にして、原子力発電、原子力産業が急速に復活しています。
動き始めている「原子力産業」の状況を、先ずは、その上流から取上げてみます。
上流とは、天然ウラン資源(ウラン鉱山)とその開発です。
産業革命以来のエネルギー源としては、石炭、石油・天然ガス、水力(発電)、ウラン(原子力発電)があります。
これらのエネルギー資源のうち、ウラン資源の特徴は?
非常に限られた場所にしかないので国際的に独占しやすい
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ウラン資源は、他の資源に比較して、非常に限られた場所(国)にしか存在しません。
世界のウラン資源の分布
世界のウラン資源の埋蔵量は、ウラン換算で、473万トン程です。その内、オーストラリアが114万トンで最大です。次いでガザフスタンの81万トン、カナダの44万トン、米国・南アフリカ34万トンと続きますが、図の○で表示されている国を数えますと、13カ国しかありません。
石炭の場合は、殆どの国に資源があります。また、石油・天然ガスも、規模は様々ですが、40~50カ国に資源があり、生産されています。
13カ国というのは、非常に限られています。
その上に、輸出量が最大のカナダの例では、サスカチュワン州のアサバスカ堆積盆地にウラン鉱山が集中しています。
リンク [1]
国が限定され、鉱山の場所が限られていますので、鉱山・鉱区は、ウラン資源開発会社により独占されやすいのです。
企業別のウラン資源保有量は、2005年にオリンピックダム鉱山(豪)を企業ごと買収取得したBHP Billiton(豪・英多国籍メジャー)およびISL(インシチュ・リーチング法)で生産可能な資源を豊富に有するKazatomprom(カザフスタンの国営会社)の2社で世界の40%強を占めている。
また、この2社にCameco(カナダ)、ArevaNC(フランス)、Rio Tinto(英国)-子会社ERA(Energy Resources of Australia Ltd)を加えた5社で世界の当面の開発対象資源量の2/3近くを占める寡占状態である。
参考 [2]
生産では、Cameco(カナダ)、COGEMA(2006年3月1日付けで、AREVA NCに社名変更)/AREVA(仏国)、ERA(オーストラリア:但しRio Tinto(英国)が68%株式を保有)等の主要8社で世界生産の約8割を担っている。
なお、Areva社は、フランスに本社を置き、フランスとドイツを拠点とする世界最大の原子力産業複合企業。フランス政府の原子力政策の転換によって2001年に誕生した。
原子炉プラントの製造のフラマトム社 が、独シーメンス社原子力部門を買収し、社名をフラマトムANP社とし、核燃料製造のコジェマ社と設立した共同持株会社。傘下に原子力部門 (Areva NP) 、原子燃料部門 (Areva NC) 、送電設備部門 (Areva T&D) を持つ。
ArevaNCは、核燃料加工と再処理工場を保有し、原子炉に対して燃料供給を行っている。原料の調達も行い、主にナイジェリア、カナダ、オーストラリア、カザフスタンに権益を保有している。
ウランは完全な売り手市場で値上がり
ウラン鉱山・天然ウランは、寡占状態にあるので、「原子力復活」が叫ばれた途端に、ウラン価格が高騰を始めました。
最近のウラン価格
2007年の3月には、45ドル/ポンド(酸化ウラン換算) まで跳ね上がったいます。
その上に、完全な売り手市場で、様々な供給条件が悪化している。
「電気事業者によれば、売り手が供給困難になった場合に供給責任が免責されたり、買い手の格付けが劣化した場合に前払いを要求されたりしている。」という状況です。
地球温暖化・CO2削減が、しっかりビジネスになっています。
参 考
エネルギー白書2007
原子力を巡る状況 [3]
エネルギー動向・原子力 [4]
温暖化脅威論は原子力利権そのもの [5]