遺伝子組み換え作物の代表は大豆ですが、その中でもアメリカ産大豆の約7割の作付け面積(2000年度時点)を占めるのがモンサント社 [1]です。日本の大豆も多くはこのモンサント産の大豆です。
モンサント社はベトナム戦争での枯れ葉剤撒布という人類史上最大の生物化学兵器被害をもたらした化学(農薬)メーカーでも有名です。枯れ葉剤によって直接死亡したとされるベトナム人は、ほぼ3500人だったといわれていますが、生まれてきた子供たちへの遺伝的な影響を含めて、言語を絶する被害となりました。
その枯葉剤の技術を転用したのがラウンドアップという除草剤で、その除草剤に対して遺伝子組み換え技術によって耐性を持たせた大豆がラウンドアップレディです。
この技術により薬剤耐性作物が出来た事で薬剤使用量が増加し、農薬残留量の増加がまず懸念されますが、1999年10月に厚生省は農薬残留量の基準を大幅に引き上げる(基準を緩くする)事になりました。
この背景にはどんな経緯があったのか?
遺伝子組み換え作物の問題とは(2) [2]でも引用させていただいた河田氏の論文を紹介させていただきます。
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以下『モンサントの企業秘密:ラウンドアップ耐性大豆では残留除草剤が基準を超える』河田昌東氏 [3]
2000年7月以来続けてきた遺伝子組換え作物の安全審査申請書の点検作業の結果を追加する。今回の主題はモンサント社の除草剤耐性大豆ラウンドアップ・レデイー大豆(以下RR大豆)の残留農薬の分析である。旧厚生省に提出されたモンサント社の申請書は全部で10冊、厚さ1メートルにも及ぶが、最後の2冊は、RR大豆の栽培条件によって、大豆に残留するグリフォサート(ラウンドアップの有効化学成分:有機リン系農薬)がどうなるか、という実験とその評価である。
(1)背景
ラウンドアップは植物の葉に直接かかってはじめて効力を発揮する。従って従来は作物の播種前にラウンドアップを散布し雑草を枯らしてから目的の種子を蒔くのが通例であった。しかしRR大豆はラウンドアップ耐性であるから、発芽して大きくなってから散布し、雑草だけ枯らすことが出来る。これが省力化農業を可能にするのである。このことはしかし、同時に除草剤の葉面吸収を意味し、大豆の植物体や大豆種子への薬剤残留の危険を増やすことにつながる。そこで、モンサント社は安全審査の申請にあたって膨大な実験を行い、栽培条件とグリフォサート(とその分解物AMPA)残留の関係を調査した。 問題はラウンドアップの散布濃度、時期と回数である。こうした実験が必要な理由は、アメリカでは家畜飼料として、大豆の全草を利用するからである。
(2)実験結果の要約
従来のような播種前散布では生育した大豆全草へのグリフォサート(+AMPA)残留は極めて少なく、平均0.249ppmであった。次に播種前1回、発芽後早期に1回の2回散布では平均2.918ppmとなり、明らかに葉面からの吸収が認められた。これが播種後2回(計3回)では平均11.575ppmとなる。散布時期は残留濃度に大きな影響を与える。播種前1回、播種後1回でも最後の散布が遅くなれば残留濃度は平均で16.316ppm、栽培場所によっては39ppmを超えるものもあった。アメリカの飼料(全草)大豆中のグリフォサート残留基準は当時15ppmであった。こうした栽培方法では約半数がこの基準を超えた(図1)。大豆種子、即ち我々が食べる豆の残留はどうなるだろうか。 平均値で5ppmを超えるものはなかったが、播種前1回散布、発芽後後期の1回散布では約半数が6ppm(当時の日本の食用大豆のグリフォサート残留基準)を超えるものがあった(図2)。
(3)モンサント社の結論:基準を上げよ!
一連の実験から、RR大豆の採用は従来の栽培方法と比べて、残留グリフォサートを大幅に増やす結果になることは明らかであった。申請書のこの章におけるモンサント社の結論を見て我々は仰天した。「(ラウンドアップの)新しい使用方法では、大豆飼料中のグリフォサートとAMPAの合計は、現在の許容濃度15mmpを越える。従って、大豆飼料中のグリフォサートとAMPAの合計許容濃度はあげる必要がある」と書かれていたのである。これらのページには「企業秘密」の記載があったが何故か我々は閲覧できた。
(4)基準は上がった!
その後、アメリカの大豆飼料中のグリフォサート残留基準は100ppmに引き上げられた。モンサント社と関係の深いと言われるFDA(食品医薬品局)が認可したからである。日本の厚生省は1999年10月、食品中のグリフォサート残留基準を改定した。大豆中のそれは6ppmから20ppmに、トウモロコシは0.1ppmから1.0ppmに、さとうきびは0.2ppmから2.0ppmに、綿実は0.5ppmから10ppmに引き上げられた。いずれもラウンドアップ耐性遺伝子組換え体の栽培がアメリカで盛んになった品種である。大豆については、各国政府に対してアメリカが残留基準を20ppmに引き上げるよう要請したことが分っている。オーストラリアやニュージーランド、イギリスなどでも大豆中グリフォサート残留基準はそれまでの0.1ppmから軒並み20ppmに引き上げられた。勿論、20ppmでも安全と言う、アメリカ発のもっともらしい理由が付けられた。こうして、日本は安心してアメリカから大豆を輸入できるようになった。
都合の悪い結果がでれば、基準を変えて安全だという事にしてしまう。
それが今の現実です。 👿
またこのラウンドアップの散布量増大は、新たな別の問題も引き起こしています。
ウイルスに対しワクチンを開発すれば、また新たにそのワクチンに適応する新種ウイルスが出現するのと同じように、ラウンドアップに適応した除草剤耐性雑草も既に出現しています。
これは農薬などの薬剤問題は時間とともにエントロピーの法則に従って希釈されるのに対し、人間が人工的に作り出した植物が広がっていくという別の問題があります。
安全かどうかの根拠も怪しく、場合によっては目先の利益追求の為に基準自体を変えてしまうような人工植物が、長い年月と生物の相互作用によって適応してきた生態系に拡散していく危険性を孕んでいるのが、この遺伝子組み換えの問題だといえます。
この辺りの実態はまた後日に・・