- 地球と気象・地震を考える - http://blog.sizen-kankyo.com/blog -

石油の不思議 ~無機成因説からのアプローチ~

前回掲載された「化石燃料について(リンク [1])」からはや5ヶ月。月日が立つのは早いものです。
imagekenkyu3p2.gif
コメントにて、しつれいしますさんにっしんさんからの質問を頂いていましたが、難解な質問で、お返事が滞っていました。申し訳ございません。
正直、無機成因説を研究している専門家でもないので、1つずつ丹念に調べていくことにします。今後とも宜しくお願いします。
続きはクリックしてからお願いします。


>無機成因説でも、地球内部で生成されるには時間がかかるのではないでしょうか?
いきなり難しい質問ですね。でも、たしかに、気になるところです。
(1)無機成因説での石油の生産過程
最初に石油が地球の内部で生成すると考えたのは周期表で有名な ロシアのメンデレーエフです。
彼によると、

・地球内部(=上部マントル)に浸透した水が高温高圧のもとで地球内部(上部マントル)の炭化物と反応
・上部マントルの炭化水素はマントル内物質や地殻より軽いため地表に染み出してくる。

ということのようです。
無機成因説における石油の生産過程について、イメージしやすいよう化学反応式でみてみましょう。

まず、地球内部の炭化物が水と反応してアセチレンを生み出し、そのアセチレン が石油の元になる様々な炭素化合物になります。
CaC2 + H2O ⇒ C2H2 + CaO
炭化カルシウム   アセチレン 酸化カルシウム

この反応で出来たアセチレンは反応しやすい炭化水素だから、地殻内を上昇しながら
温度を下げていくうちに簡単に他の炭化水素に変化します。
3C2H2      ⇒ C6H6     (ベンゼン)
   触媒Al(アルミニウム)600度
C2H2 + H2  ⇒ C2H4     (エチレン)
C2H4 + H2  ⇒ C2H6     (エタン)
C2H2 + H2O ⇒ CH3CHO  (アセトアルデヒド)
CH3CHO+ O ⇒ CH3COOH  (酢酸)

こうして出来た化合物が石油の元になるのです。
これが、無機成因説における石油の生産過程です。
(2)石油が地球内部で生成されるのに時間がかかるか?
いろいろ調べたのですが、なかなか決定的な資料やデーターは見つかりませんでした。
よって、これからは完全な仮説となるので留意してください。
おかしい、間違っていると思われる方が遠慮なくご指摘下さい。
おそらく、上記の反応にはそれほど時間を要しないと思われるので、反応時間は割愛します。
しかし、上部マントル(深さ30km~670km)への水の浸透と、上部マントル内でできた炭化水素が地表に染み出してくるには相当な時間がかります。上部マントルへの水の浸透は、水が地殻成分より軽いためなんらかの要因がないと浸透していきません。(リンク [2])よって、プレートテクトニクスによる、 低温で密度が高い故に沈み込む海洋地殻による含水相の地球内部への運搬が考えらます。つまり、上部マントル(深さ30km以上)へ水が到達する時間は、プレートの移動速度を年間5cmとすると、10万年で5kmなので、60万年以上かかることになります。
次に、上部マントル内でできた炭化水素が地表に染み出してくるのには、根拠はないですが、仮に上部マントルから地表面まで地殻(深さ10km~30km)を1時間1mmの速度で上昇するとして、年間10m、1,000万年で10kmとなり、地表までは1千年~3千年かかることになります。
(3)まとめ
結局、地球内部で石油が生成されるには、約60万年程度かかることになります。
(4)考察
無機成因説であっても、石油が生成され採掘可能な地表面に現れるには約60万年かかることになる。
ということは、たとえ無機成因説が正しく現在もなお石油が生成され続けているとしても、地球内部(上部マントル)への強制的な水の注入がなければ石油は今以上増えていかないということになる。
無機成因説が正であるならば、地球誕生以来の地表面水量の変化を調べることで、今後の石油生産量の変化を解くことが出来るのかもしれません。
次回以降探っていこうと思います。

[3] [4] [5]