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EUバブルって何?

「京都議定書に向けた主張2」 [1]でEUの主張を扱いましたが、なぜ、EUはひとつの単位にまとまることが出来たのでしょうか?



EUは様々な国内事情を抱えており、温室効果ガスの削減目標もそれぞれ異なっています。1990年を基準にした2012年までの削減目標値は最高でルクセンブルクの30%減であり、最低はポルトガルの40%増でした。

それぞれが、国内事情に配慮し、域内の経済不均衡を極力縮めて通過統合をやりとげたいとする政治的かつ経済的思惑が見え隠れしています。

※そもそも、削減目標の減は分かりますが、増っておかしいですよね…。これこそが排出権(排出枠)取引の策略としか思えません。



京都議定書に向けた主張では、EUは域内の複数の国をひとくくりにし、一つの単位として取り扱うことを主張し、域内では15%の削減を実行するというものである。と同時に、域外に対してもの15%の削減を求めていきました。



この削減目標の設定において、EU域内には差別化を認める一方で域外に対しては一律削減を求めるアプローチのことをEUバブルと言います。



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このEUの方式(EUバブル)は、交渉のなかでは一つの争点となりました。

それは、このEUバブルというのがEU域内における一種の排出権取引とみることができるからです。



排出権取引とは、国内の削減目標に達成できない場合に、排出枠に余裕のある国からこれを買い取って目標を達成しようとするものです。



上述にも示した通り、EU域内ではルクセンブルクとポルトガルのような国々もあり、EU域内では金銭の取引は伴わないが、互いに排出枠を融通すうことができるため、一種の排出権取引とみなすことができるのではないでしょうか。



そもそも排出権取引には2つの形態があります。一つは内部的排出権取引であり、例えば一つの会社内の部門間で行われるような形態や、ある一定地域内で行う形態です。つまりEU域内で行う取引もこれに当たります。そして、もう一つは企業間や締約国間で行われる外部的排出権取引(現在、話題に上っている方)です。



両者の違いは金銭的なやり取りの有無であり、内部的排出権取引においては金銭の授受を伴わないものが通例となっています。(※ちなみに、日本はアメリカの主張する排出権取引(外部的)には賛成の立場であったが、EUバブルに対しては反対の姿勢を示しました。)



EUバブルとは、EU域内の経済的不均衡を解消する方法の一つであり、もっと言えば、市場維持のための政策であったと思われます。そして、この政策はアメリカが作り出す国際市場への対抗策であり、言い換えれば市場の覇権闘争とも言えるのではないでしょうか。

(参考;EUの歩みに見る「市場拡大維持のための国家の再編過程」




お付き合い頂きありがとうございました m(_ _)m



<参考文献>

 ・「京都議定書」再考!/江澤誠/(株)新評論

<参考サイト>

 ・通商産業省-地球温暖化とCOP3に関する疑問(Q&A)- [2]

by 村田頼哉


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