前回 [1]は、マラリア対策で使用されていたDDTが乱用によって全面禁止になり、未だにマラリアで苦しむ人々が多数存在することを扱いました。そのきっかけになった「沈黙の春」のその後の影響を調べてみましたので、お付き合いください。
さて、レイチェル・カーソン氏は1962年に「沈黙の春」を出版しています。
科学的な立証には到っていない部分もありますが、農薬の使用状況と使用された地域の動植物や人間に起きた現象事実から因果関係を丁寧に推測しており、環境問題提起としては優れていると思います。想像していた感情的でヒステリックな文章はありません。
私がこの本を読んで受け取ったレイチェル・カーソン氏のメッセージは、
「化学薬品は非常に危険なもので安易に使用してはいけない。」
というもの。
例えば人が病気になれば法律で規定された資格を持つ医師に診断を受け、同じく法律に規定された資格を持つ薬剤師によって調剤された薬を口にするように、農薬等についても、自然を生命体の連鎖ととらえ植物や動物、空気、土、水への影響を診断しながら農薬の使用をしていくような全体を診る存在が必要というのが結論かなと思います。
では、な ぜ ?農薬の使用制限ではなく、極端な農薬禁止という動きにつながったのでしょうか?
なんでだろう?と、首をかしげつつ下をポチっ と御願いします。
改めてですが、「沈黙の春」は1962年6月にまず雑誌「ニューヨーカー」に抜粋が掲載され話題になりました。
当時のケネディ大統領は、大統領科学諮問委員会に調査をさせ、
「私たちは農薬の使用にともなう危険性を正確に評価する充分な知識を持ち合わせていない。そしてこれら毒物は使用に供せられる以前にその安全性が確かめられなければならない。」
という趣旨の報告書が提出され、1963年DDTの使用は全面的に禁止されたのです。
この委員会の顧問が実は、知る人ぞ知るジェームス・D・ワトソン氏。そうフランシス・クリック氏とともに、1953年にDNAが二重らせん構造であることを発見した人でした。
「沈黙の春」の出版された1962年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。
環境問題とDNAって?DNA・・・遺伝子・・・・遺伝子組み換え作物・・・・環境問題 って?あれ?つながっている!これって偶然?
農薬禁止⇒今後の農業をどうする?⇒病気や害虫に強い農作物⇒遺伝子組み換えへ |
そのジェームス・D・ワトソン氏は著書「DNA」で
「あの当時の私は害虫への抵抗力をもつ植物を作るなど考えもしなかった。そんな夢のような解決策が実現できるとは思えなかったのだ。しかし今日ではまさにその方策こそが、有害な化学物質への依存を減らしつつ害虫を駆除する方法になっているのである。」
と書いています。
そう、ワトソン氏のコメントの真偽はともかく「沈黙の春」以降、害虫を退治する農薬が使用できなくなったことで、農業技術は害虫に対抗できる植物を作る方向にシフトし、遺伝子組み換えの技術が発達したのです。
これは、うがった見方かもしれませんが、遺伝子工学の可能性が開かれ、遺伝子組み換え開発に技術も資金も大きくシフトするために「沈黙の春」が利用されたのではないでしょうか?
安くて誰でも利用できる農薬があれば、高額な開発費とリスクの伴う遺伝子組み換え技術などに投資するわけがない。
環境運動のバイブルと言われている「沈黙の春」が、新たな環境問題の引き金になっているとは、なんて皮肉!
こうした物事を極端化して危機感を煽り、新たな市場を作り出す戦略は、今の新エネルギー問題など、環境問題によく見られるとは思いませんか?
Nannokiさんの「遺伝子組み換え作物の問題とは」 [2]を横目で見ながら、このことをさらに検証していきたいと思います。それではまた
byコバヤシ