ケニアで開かれた地球温暖化防止条約締約国会議で、排出権取引の運用ルールの見直し議論がまとまらず、結果を先送りした。温暖化ガスのひとつである二酸化炭素(CO2)を地下に封じ込めた企業やフロンの破壊に貢献した企業に排出権を与えてほしいと欧州、日本が主張。これに南米諸国が反発した。排出権を得たい側と売りたい側の思惑がすれ違った。
日経金融新聞 夕刊(2006/11/20)より
『森林が増えている国々って実態はどうなの?』 [1]でも述べた排出権であるが、ここにきて完全に市場に飲み込まれているようです。
いったいどのような状況になっているのか


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CO2の地下貯留案は大気中に放出されれば地球温暖化につながるため、地下に送って埋め込んでしまえば、その排出枠を余分に使っても問題ないという考え方だ。
賛成派の代表格は欧州連合(EU)。オイルメジャーなどが地中貯留の事業化を計画している。EUは1990年比で8%の削減が義務付けられ、各企業に守るべき排出枠を割り振っている。事業を拡大するには排出権確保が不可欠となる。
事業拡大=利益拡大が前提とする市場では、現状のやり方では無理と言っているようなものである。
これに対してブラジルやアルゼンチンなどの南米諸国は「将来CO2が漏れ出す危険性がある」として強行に反対した。だが、本当の狙いは「CO2排出権価格の暴落をさけるため」(日本政府交渉団)だ。
実は南米諸国はメタンガス発電などの省エネ事業で排出権獲得を狙っている。省エネ事業はすでに運用ルールとして認められている。しかも南米諸国は先進国とは異なり、排出枠の義務付けられていない。先進各国に排出権を売る立場にある。地下貯留方式が認められれば、排出権が供給過剰となり、排出権価格が大幅に下がると懸念している。
両サイドの意見の隔たりは埋まらず、結論を2年後に先送りした。
『何の会議をやっているのか?』さえ見えないし、もっと言えば『市場を維持(拡大)するには』としか見えない…。
欧州の排出権取引市場では、取引価格の高騰は著しく、2005年1月の取引開始当初は7~8ユーロ/t-CO2(1000円前後)であったが、現在は3倍以上に跳ね上がり、およそ27ユーロ(約3800円)/t-CO2ほどになっている。これは、クレジットの取得を行う企業にとって悪い話ではないが、それを買い取る政府にとっては大きな問題であり、ひいては国民一人一人に跳ね返ってくるものである。
『京都議定書目標達成に向けて』 [3]2006年3月8日 トレンドウォッチより
このように、市場原理により取引権価格の高騰は避けられない状況であり、
高度先端技術を獲得できた先進国は、幻想の製品価格格差を利用して、圧倒的な有利さで市場を制覇できる。
『環境問題を考えるための視点』 [4]るいネットより
環境問題が市場原理に取って代わられた時点で、環境問題などはどうでもよく、己が作り出した環境問題を逆手にとった技術獲得によって、市場の旨みを絞りとることだけを考えているような気がしてならない。